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【完全ガイド】ハンドメイド作家の法人化|タイミング・費用・手続きを徹底解説

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牧野悠

牧野悠

PRIMA! マーケティング・DX支援 / 株式会社AsetZ 執行役員

【完全ガイド】ハンドメイド作家の法人化|タイミング・費用・手続きを徹底解説

著者: 牧野悠(PRIMA! マーケティング・DX支援 / 株式会社AsetZ 執行役員)

「売上が増えてきたけど、法人化すべきタイミングはいつ?」 「個人事業主のままでいいのか、法人にした方がいいのか分からない」 「法人化って何から始めればいいの?」

ハンドメイド事業が成長してくると、必ず直面するのが「法人化」の問題です。

私は、PRIMA!(ビーズアクセサリーブランド)のマーケティング・DX支援を担当しています。PRIMA!の事業成長に携わる中で、法人化に関するさまざまな知見を得てきました。

この記事では、ハンドメイド作家が法人化を検討すべきタイミング、個人事業主と法人の違い、法人化のメリット・デメリット、具体的な手続きと費用まで徹底解説します。

(注)本記事は2026年2月時点の税制・法令に基づいています。税制は変更される可能性があるため、法人化の判断は税理士にご相談ください。


法人化を検討すべき5つのタイミング

「いつ法人化すべきか?」は、多くのハンドメイド作家が悩むポイントです。以下の5つのサインが出たら、法人化を真剣に検討するタイミングです。

サイン1: 年間の課税所得が600〜800万円を超えた

法人化を検討する最も明確な指標は、税金面での損益分岐点です。

個人事業主の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が上がります。

課税所得 所得税率 住民税 合計税率
195万円以下 5% 10% 15%
195〜330万円 10% 10% 20%
330〜695万円 20% 10% 30%
695〜900万円 23% 10% 33%
900〜1,800万円 33% 10% 43%

一方、法人税の実効税率は約25〜30%程度です。

つまり、課税所得が600〜800万円を超えると、法人の方が税負担が軽くなる可能性があります。これが法人化の一般的な目安です。

ただし、法人には社会保険料の負担や法人住民税(赤字でも年間約7万円)があるため、単純に税率だけでは判断できません。税理士に試算してもらうことを強くおすすめします。

サイン2: 売上が安定して月50万円以上

月商50万円(年商600万円)が安定していると、法人化のメリットが具体的に見えてきます。

この段階で起こること:

  • 確定申告の作業量が増え、経理が複雑になる
  • 外注先や取引先との取引が増える
  • 在庫規模が大きくなり、資金繰りの管理が必要になる
  • 「事業として本気でやっている」と実感する

月商50万円は、ハンドメイド事業が「副業」から「本業」に切り替わるタイミングとも言えます。

サイン3: 取引先から法人格を求められる

事業が大きくなると、以下のような場面で「法人ですか?」と聞かれることが増えます。

  • 卸売業者との取引契約
  • 百貨店やセレクトショップへの出品
  • 企業コラボの依頼
  • 融資・ビジネスローンの申請

実際に、事業が成長して企業からのコラボ依頼が増えた段階で、法人格が求められるケースは少なくありません。個人事業主のままでは契約を結べないこともあり、法人化が事業拡大に不可欠となる場面があります。

サイン4: 従業員を雇う・外注が増える

一人で制作が追いつかなくなり、外注スタッフやパートを雇い始めたら、法人化を検討するタイミングです。

個人事業主のまま人を雇うデメリット:

  • 給与計算・源泉徴収の事務負担
  • 雇用保険・労災保険の手続き
  • 取引先からの信用面での不利

法人化するメリット:

  • 給与・社会保険の仕組みが整備される
  • 雇用される側も安心できる
  • 取引先からの信用が高まる

サイン5: 事業を長期的に続ける覚悟がある

法人化は、設立コストや維持コストがかかります。「来年もハンドメイドを続けているか分からない」という状態では、法人化は時期尚早です。

法人化すべき人の条件:

  • ハンドメイド事業を5年、10年と続ける意思がある
  • 事業をさらに大きくしたい
  • ブランドとして認知度を高めたい
  • いずれはスタッフを雇い、組織を作りたい

個人事業主と法人の違い|税制・信用・社会保険を比較

法人化を判断するには、個人事業主と法人の違いを正確に理解する必要があります。

税制の違い|累進課税 vs 法人税

項目 個人事業主 法人
所得税/法人税 5〜45%(累進課税) 約15〜23.2%
住民税 10% 約1.6〜6.5%
事業税 3〜5% 3.5〜7%
赤字繰越 3年 10年
給与所得控除 なし 役員報酬で適用可能
退職金 なし 損金算入可能

法人化の最大の税制メリットは「役員報酬」です。

法人化すると、あなた自身が会社から「役員報酬」(給料)を受け取る形になります。この役員報酬には給与所得控除が適用されるため、所得税の計算上、大きな控除が得られます。

例: 課税所得800万円の場合

個人事業主:

  • 所得税: 約120万円(800万円 × 23% - 63.6万円)
  • 住民税: 約80万円
  • 事業税: 約25万円
  • 合計: 約225万円

法人(役員報酬600万円、法人利益200万円の場合):

  • 法人税等: 約40万円(200万円に対して)
  • 役員報酬の所得税: 約40万円(給与所得控除後)
  • 役員報酬の住民税: 約35万円
  • 合計: 約115万円(社会保険料は別途)

年間約110万円の差額(あくまで簡易計算。社会保険料の増加分を考慮する必要あり)

社会保険の違い|国民健康保険 vs 厚生年金

項目 個人事業主 法人
健康保険 国民健康保険(全額自己負担) 厚生年金・健康保険(会社が半額負担)
年金 国民年金(月16,980円) 厚生年金(報酬に応じて)
将来の年金受給額 基礎年金のみ 基礎年金 + 厚生年金

法人化のメリット:

  • 厚生年金に加入でき、将来の年金受給額が増える
  • 健康保険料の半額を会社が負担(実質、自分の会社なので全額負担だが、法人経費になる)

法人化のデメリット:

  • 社会保険料の総額は国民健康保険+国民年金より高くなることが多い
  • 社会保険の事務手続きが増える

信用力の違い|銀行・取引先・お客様

項目 個人事業主 法人
銀行融資 個人信用に依存 法人としての信用
取引先との契約 制限あり スムーズ
お客様からの信頼 個人ブランド 法人としての安心感
クレジットカード 個人カード 法人カード

法人格があることで、取引先からの信用が格段に高まります。百貨店への出品、企業コラボ、メディア取材などで、法人であることが前提条件になるケースも少なくありません。

経費の範囲の違い

項目 個人事業主 法人
生命保険 控除(上限あり) 全額経費可
出張日当 不可 経費可
社宅 不可 経費可(条件あり)
退職金 不可 経費可
健康診断 不可 福利厚生費として経費可

法人化すると、経費として認められる範囲が広がります。特に「出張日当」や「社宅」は、個人事業主では使えない節税手法です。


法人化のメリット|税金・信用・将来性

メリット1: 税負担の軽減(所得800万円超で効果大)

前述の通り、課税所得が800万円を超えると、法人の方が税負担が軽くなる可能性が高いです。

ポイント:

  • 役員報酬の設定で、所得を分散できる
  • 給与所得控除が適用される
  • 法人税率は所得に関わらずほぼ一定
  • 赤字を10年間繰り越せる(個人は3年)

メリット2: 社会的信用の向上

法人化すると、以下の場面で信用力が上がります。

  • 銀行融資: 法人口座があることで、融資審査が通りやすくなる
  • 取引先: 法人間取引がスムーズ
  • お客様: 「会社がやっている」という安心感
  • メディア: 取材・掲載時に法人の方が信頼される

法人化することで、企業からのコラボ依頼が格段にスムーズになるケースは多いです。「個人事業主です」と言うよりも、「法人として運営しています」と言う方が、取引先の反応が変わることは珍しくありません。

メリット3: 経費の幅が広がる

法人化すると、以下が経費にできるようになります。

  • 役員報酬: 自分への給与が会社の経費
  • 社宅: 自宅を社宅として、家賃の一部を経費に
  • 出張日当: 出張時に日当を支給(非課税)
  • 退職金: 将来、退職金として受け取る(退職所得控除が適用)
  • 生命保険: 一部の保険は全額経費に

これらを活用することで、実質的な手取りを増やすことが可能です。

メリット4: 将来の事業承継・売却がしやすい

法人化しておくと、将来的に以下の選択肢が広がります。

  • 事業承継: 株式を譲渡するだけで事業を引き継げる
  • M&A(売却): 法人格があることで、事業売却がスムーズ
  • 出資を受ける: 投資家からの出資を受けやすい

個人事業主のままでは、事業そのものを売却することが難しく、あなたが辞めたら事業も終わりになります。法人化しておけば、ブランドを「資産」として残すことができます。

メリット5: 赤字を10年間繰り越せる

法人は赤字(欠損金)を10年間繰り越すことができます(個人事業主は3年)。

活用場面:

  • 法人設立初年度に設備投資で赤字
  • 翌年以降の利益と相殺して節税

特にハンドメイド事業では、設備投資(ミシン、カメラ、撮影スタジオ等)や在庫の仕入れで初年度に赤字になることもあるため、10年間の繰越は大きなメリットです。


法人化のデメリット|コスト・手間・リスク

法人化にはメリットだけでなく、デメリットもあります。冷静に判断しましょう。

デメリット1: 設立費用がかかる

法人設立には、以下の費用がかかります。

費用 合同会社 株式会社
登録免許税 6万円 15万円
定款認証費 不要 約5万円
定款印紙代 4万円(電子定款なら0円) 4万円(電子定款なら0円)
実印作成 約5,000円 約5,000円
合計(電子定款) 約6.5万円 約20.5万円
合計(紙の定款) 約10.5万円 約24.5万円

これに加えて、司法書士に依頼する場合は報酬として5〜10万円程度がかかります。

デメリット2: 毎年の維持コストがかかる

法人は、赤字であっても以下の維持コストがかかります。

費用 年間目安
法人住民税均等割 約7万円(最低)
税理士費用 15〜30万円
社会保険事務 自分で行う or 社労士に依頼
決算申告 税理士に依頼(上記に含む)
合計 約22〜37万円/年

個人事業主であれば、赤字なら税金はゼロ、税理士も不要(会計ソフトで対応可能)ですが、法人は赤字でも年間22万円以上のコストがかかります。

デメリット3: 事務手続きが大幅に増える

法人化すると、以下の事務手続きが必要になります。

  • 毎月の役員報酬の支払い・源泉徴収
  • 社会保険料の納付
  • 法人決算・確定申告(個人より複雑)
  • 株主総会の議事録作成(形式的でも必要)
  • 登記変更(住所変更・役員変更等)

これらの事務を自分で行うのは現実的ではないため、税理士への依頼がほぼ必須になります。

デメリット4: 社会保険料の負担が増える

法人の場合、役員も厚生年金・健康保険に強制加入です。

例: 役員報酬月30万円の場合

  • 健康保険料(会社負担分): 約15,000円/月
  • 厚生年金保険料(会社負担分): 約27,000円/月
  • 会社負担合計: 約42,000円/月(年間約50万円)

個人負担分も同額なので、合計で年間約100万円の社会保険料が発生します。国民健康保険+国民年金より高くなるケースが多いです。

ただし、将来の厚生年金受給額が増えるため、長期的には有利になります。

デメリット5: 廃業時のコスト

法人を解散・清算する場合にもコストがかかります。

  • 解散登記: 3万円
  • 清算結了登記: 2,000円
  • 官報公告: 約3万円
  • 司法書士報酬: 5〜10万円
  • 合計: 約10〜15万円

個人事業主の場合、廃業届1枚で終わりますが、法人は手続きが複雑です。


合同会社 vs 株式会社|どちらを選ぶべき?

法人化を決めたら、次は「合同会社」と「株式会社」のどちらにするかを選びます。

合同会社と株式会社の比較

項目 合同会社 株式会社
設立費用 約6〜10万円 約20〜25万円
定款認証 不要 必要(公証役場)
代表者の肩書 代表社員 代表取締役
決算公告 不要 必要
利益配分 自由に設定可能 株式に応じて配分
知名度・信用力 やや低い 高い
税制上の違い なし なし

ハンドメイド作家には「合同会社」がおすすめ

結論から言うと、ほとんどのハンドメイド作家には「合同会社」がおすすめです。

理由:

1. 設立費用が安い 株式会社より約15万円安く設立できます。ハンドメイド事業では、設備投資や材料購入に資金を回した方が効率的です。

2. 手続きが簡単 定款認証が不要で、設立手続きが株式会社より簡単です。

3. 運営がシンプル 決算公告が不要、株主総会も不要。一人で運営する場合、事務負担が大幅に減ります。

4. 税制上の違いはない 法人税・消費税・社会保険料は、合同会社も株式会社も同じです。

株式会社を選ぶべきケース

以下の場合は、株式会社を検討してもよいでしょう。

  • 外部から出資を受ける予定がある
  • 将来、上場を目指す
  • 取引先が「株式会社」でないと契約できない
  • 「代表取締役」の肩書が必要

ただし、合同会社から株式会社への組織変更も可能なので、まずは合同会社で始めて、必要に応じて変更する、という戦略もあります。

株式会社を選ぶ作家が多いケース

実際に株式会社を選ぶハンドメイド作家は、取引先の企業との契約において株式会社であることが求められるケースや、将来の事業拡大を見据えた判断をしているケースが多いです。

ただし、これはビジネス規模や取引先の特性によるものです。ハンドメイド事業を始めたばかりの段階では、合同会社で十分だと言えるでしょう。


法人化に必要な手続きと流れ

法人設立の具体的な手続きを、ステップバイステップで解説します。

ステップ1: 事前準備(2〜4週間)

法人設立前に、以下を決めておきます。

決めること:

  • 会社名(商号): ブランド名 or 新しい会社名
  • 本店所在地: 自宅 or オフィス
  • 事業目的: 「ハンドメイド商品の企画・製造・販売」等
  • 資本金: 1円から可能(ただし、信用面で100〜300万円が推奨)
  • 事業年度: 何月〜何月にするか(設立月の前月末が一般的)
  • 役員: 代表者、取締役など

資本金の決め方:

  • 1〜10万円: 法的にはOKだが、信用面で不利
  • 100万円: 最低限の信用を確保できる
  • 300万円: 融資審査で有利
  • 1,000万円以上: 消費税の免税事業者にならない(注意)

資本金は1,000万円未満にしておくと、設立後2年間は消費税が免除されます。これは大きなメリットなので、1,000万円未満に抑えることをおすすめします。

ステップ2: 定款の作成・認証(1〜2週間)

定款(ていかん)は、会社の基本ルールを定めた書類です。

合同会社の場合:

  • 定款を作成するだけでOK(公証役場での認証は不要)

株式会社の場合:

  • 定款を作成し、公証役場で認証を受ける
  • 認証手数料: 約5万円

電子定款のすすめ: 紙の定款は4万円の印紙代がかかりますが、電子定款なら印紙代0円です。司法書士やオンラインサービス(マネーフォワード会社設立、freee会社設立等)を使えば、電子定款で作成できます。

ステップ3: 登記申請(1〜2週間)

法務局に登記申請を行い、法人を正式に設立します。

必要書類:

  • 設立登記申請書
  • 定款
  • 資本金の払込証明書
  • 代表者の印鑑届出書
  • 役員の就任承諾書

登録免許税:

  • 合同会社: 6万円
  • 株式会社: 15万円

登記申請は、法務局の窓口 or オンライン申請が可能です。

ステップ4: 法人設立後の届出(1〜2週間)

法人設立後、以下の届出が必要です。

届出先 届出内容 期限
税務署 法人設立届出書 設立から2ヶ月以内
税務署 青色申告承認申請書 設立から3ヶ月以内
税務署 給与支払事務所等の開設届出書 給与支払開始から1ヶ月以内
都道府県税事務所 法人設立届出書 都道府県による
市区町村 法人設立届出書 市区町村による
年金事務所 社会保険の加入届 設立から5日以内
労働基準監督署 労働保険の加入届 従業員を雇用した日から10日以内

ステップ5: 銀行口座・クレジットカードの開設

法人口座の開設は、個人口座より審査が厳しいです。

おすすめの銀行:

  • GMOあおぞらネット銀行: オンラインで開設可能、審査が比較的早い
  • 住信SBIネット銀行: 法人口座の手数料が安い
  • 楽天銀行: 決済サービスとの連携がスムーズ
  • メガバンク(三菱UFJ・三井住友等): 信用力が高いが、審査が厳しい

法人口座開設のコツ:

  • 設立直後はネット銀行から開設
  • 事業実績ができたらメガバンクに申し込む
  • 事業計画書を用意しておく

全体のスケジュール目安

ステップ 期間
事前準備 2〜4週間
定款作成・認証 1〜2週間
登記申請 1〜2週間
届出 1〜2週間
銀行口座開設 2〜4週間
合計 約2〜3ヶ月

オンラインサービス(freee会社設立、マネーフォワード会社設立等)を使えば、手続きの手間を大幅に削減できます。自分で一から調べるよりも、これらのサービスを活用することをおすすめします。


法人化の費用|初期費用と年間維持費

法人化にかかる費用を、初期費用と年間維持費に分けて整理します。

初期費用の目安

費用項目 合同会社 株式会社
登録免許税 6万円 15万円
定款認証 0円 約5万円
定款印紙代(電子定款) 0円 0円
実印作成 約5,000円 約5,000円
司法書士報酬 5〜10万円 5〜10万円
合計 約12〜17万円 約26〜31万円

節約するなら:

  • 電子定款を利用する(4万円節約)
  • オンライン会社設立サービスを使う(司法書士費用を節約)
  • freee会社設立やマネーフォワード会社設立なら、ほぼ無料で書類作成可能

年間維持費の目安

費用項目 年間目安
法人住民税均等割 約7万円
税理士顧問料 月1〜3万円(年12〜36万円)
決算申告費用 10〜20万円(税理士に依頼)
社会保険料(会社負担分) 年30〜60万円(報酬に応じて)
合計 約60〜120万円/年

年間60〜120万円の維持費がかかることを考えると、最低でも年間利益が600万円以上ないと、法人化のメリットを享受しにくいと言えます。


法人化を経験した作家たちの声|よくあるパターン

法人化を決意する背景

多くのハンドメイド作家が法人化を決意する背景には、共通する要因があります。

1. 事業の成長 売上が安定して成長し、個人事業主の枠では対応しきれなくなるケースが多いです。

2. 取引先からの要望 企業とのコラボレーションや卸売りの取引が増え、法人格を求められるケースが出てきます。

3. 税負担の増加 所得が増えるにつれて累進課税の負担が大きくなり、法人化による節税効果が見込めるようになります。

4. ブランドの信用力向上 SNSフォロワーが増え、ブランドの認知度が高まると、法人としての信用が必要になる場面が増えます。

法人化して良かったこと(よくある声)

1. 取引がスムーズになった 企業との契約が格段にスムーズになります。「法人ですか?」と聞かれて「はい」と答えられるだけで、商談の進み方が変わるという声は多いです。

2. 経費の幅が広がった 個人事業主時代には使えなかった経費項目が増え、手取りが改善されたという声があります。

3. 事業への意識が変わった 「会社を経営している」という意識が芽生え、より戦略的に事業を考えるようになったという方が多いです。

法人化で大変だったこと(よくある声)

1. 税理士選び ハンドメイド事業の特性を理解してくれる税理士を見つけるのに苦労するケースが多いです。

2. 社会保険の手続き 年金事務所への届出、毎月の社会保険料の計算・納付など、事務作業が格段に増えます。

3. 法人口座の開設 設立直後は実績がないため、メガバンクの審査に通らないことが一般的です。まずはネット銀行で口座を開設し、実績を積んでからメガバンクに申し込むのがおすすめです。

法人化前にやっておくと良いこと

1. 帳簿付けの習慣化 個人事業主時代から会計ソフトで帳簿をつけておくと、法人化後も経理にスムーズに移行できます。

2. 事業用口座の分離 個人用と事業用の口座を分けておくと、法人への資産移転がスムーズです。

3. 確定申告の経験 青色申告で複式簿記を経験しておくと、法人の経理にも対応しやすくなります。

4. 税理士との相談 法人化の半年前から税理士に相談し、最適なタイミングと方法を一緒に検討するのが理想的です。事前に相談しておくと、スムーズに移行できます。

→ 開業届の提出から法人化までの流れは、ハンドメイド作家の開業届ガイドをご覧ください。


法人化前にやっておくべき5つの準備

法人化を決意したら、設立前にやっておくべき準備があります。

準備1: 税理士に相談する

法人化の判断は、必ず税理士に相談してください。

相談すべきこと:

  • 法人化のタイミングは適切か?
  • 合同会社 vs 株式会社、どちらが有利か?
  • 役員報酬はいくらに設定すべきか?
  • 消費税の課税事業者になるタイミングは?

税理士の探し方:

  • 知人の紹介
  • 税理士紹介サービス(税理士ドットコム等)
  • freee税理士検索
  • ハンドメイド事業の経験がある税理士がベスト

準備2: 事業計画を整理する

法人設立にあたって、事業計画を整理しておきましょう。

最低限まとめること:

  • 過去1年の売上・経費・利益の実績
  • 今後1〜3年の売上予測
  • 必要な資金と調達方法
  • 人員計画(いつ、何人雇うか)

事業計画は、銀行口座の開設や融資申請でも求められるため、作成しておくと後々役立ちます。

準備3: 個人事業の帳簿を整理する

法人化に伴い、個人事業を廃業します。廃業前に帳簿を整理し、未回収の売掛金や未払いの経費がないか確認しましょう。

チェックリスト:

  • 売掛金の回収が完了しているか
  • 未払いの経費がないか
  • 在庫の棚卸しを実施したか
  • 個人事業の廃業届を準備したか
  • 青色申告取消届を準備したか

準備4: 資本金を準備する

法人設立には資本金が必要です。1円から可能ですが、信用面を考えると100〜300万円を推奨します。

資本金の注意点:

  • 資本金1,000万円以上: 消費税が設立初年度から課税(避けるべき)
  • 資本金の出所: 自己資金が基本(借入金は資本金にしない方がよい)

準備5: 開業届の廃業届を提出する

法人化に伴い、個人事業の廃業届を税務署に提出します。

提出書類:

  • 個人事業の廃業等届出書
  • 青色申告の取りやめ届出書
  • 給与支払事務所等の廃止届出書(従業員がいた場合)

→ 開業届の手続きについては、ハンドメイド作家の開業届ガイドで詳しく解説しています。


法人化すべきか?判断フローチャート

以下のフローチャートで、あなたが法人化すべきかを判断してみましょう。

フローチャート

Q1: 年間の課税所得は600万円以上ですか?

  • はい → Q2へ
  • いいえ → 現時点では法人化は不要です。まずは売上を伸ばしましょう。

Q2: 事業を5年以上続ける意思がありますか?

  • はい → Q3へ
  • いいえ → 法人化は見送りましょう。維持コストが負担になります。

Q3: 従業員を雇う、または外注を増やす予定がありますか?

  • はい法人化を強く推奨。 雇用の安定性・信用力の面で有利です。
  • いいえ → Q4へ

Q4: 取引先から法人格を求められていますか?

  • はい法人化を推奨。 取引機会を逃さないためにも。
  • いいえ → Q5へ

Q5: 年間維持費(約60〜120万円)を支払う余裕がありますか?

  • はい法人化を検討してよいタイミングです。 税理士に具体的な試算を依頼しましょう。
  • いいえ → もう少し利益を増やしてから検討しましょう。

フローチャートの補足

上記はあくまで目安です。最終的な判断は、以下の要素を総合的に考慮して行ってください。

  • 税金のシミュレーション: 税理士に依頼して、個人vs法人の税負担を具体的に比較
  • 社会保険料の試算: 厚生年金・健康保険の負担増を考慮
  • 維持コスト: 税理士費用・法人住民税等のランニングコスト
  • 信用力: 取引先・銀行・お客様からの信用がどれだけ必要か

よくある質問(FAQ)

Q1: 売上がいくらになったら法人化すべきですか?

A: 一般的には、年間の課税所得が600〜800万円を超えたら法人化のメリットが大きくなります。ただし、これは税金面だけの判断です。信用力や事業拡大の観点も含めて、総合的に判断してください。税理士に試算を依頼し、個人vs法人の税負担を比較することを強くおすすめします。

Q2: 合同会社から株式会社に変更できますか?

A: はい、合同会社から株式会社への組織変更は可能です。費用は登録免許税6万円+司法書士報酬等で、約15〜20万円程度です。まずは合同会社で始め、必要に応じて株式会社に変更する、という戦略も有効です。

Q3: 法人化したら消費税はどうなりますか?

A: 資本金1,000万円未満で設立した場合、原則として設立後2年間は消費税が免除されます(インボイス登録した場合は除く)。3年目以降は、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。

Q4: 一人でも法人化できますか?

A: はい、一人でも法人化できます。合同会社なら「一人社員」、株式会社なら「一人取締役」で設立可能です。ハンドメイド作家の多くは、一人法人からスタートしています。

Q5: 法人化のタイミングは何月がベストですか?

A: 一般的には、個人事業の確定申告(12月決算)が終わった後の1〜4月が法人設立のタイミングとして適しています。また、消費税の免税期間を最大限活用するために、事業年度の開始月(設立月)を工夫する方法もあります。税理士に相談して最適な時期を決めましょう。

Q6: 法人化したらハンドメイド販売のプラットフォーム登録はどうなりますか?

A: minne・Creema等のプラットフォームは、個人でも法人でも利用できます。法人化後は、ショップ情報を法人名に変更し、振込口座を法人口座に変更する手続きが必要です。各プラットフォームのヘルプを確認してください。


まとめ:法人化はゴールではなく「次のステージ」への入口

法人化の判断は慎重に、でも恐れすぎない

法人化は、ハンドメイド事業の「次のステージ」への入口です。

法人化すべき人:

  • 年間課税所得600万円以上
  • 事業を長期的に続ける意思がある
  • 取引先から法人格を求められている
  • 従業員を雇う予定がある

まだ法人化すべきでない人:

  • 年間課税所得が600万円未満
  • 事業を続けるか迷っている
  • 維持コストを支払う余裕がない

法人化はメリットも大きいですが、維持コストもかかります。「なんとなく格好いいから」ではなく、数字に基づいた判断をしましょう。

個人事業主の今のうちにやっておくべきこと

法人化を将来的に検討しているなら、今のうちに以下を実践しておきましょう。

  • 会計ソフトで帳簿をつける習慣をつける
  • 事業用口座を個人用と分ける
  • 確定申告を青色申告で行う
  • 在庫管理を徹底する
  • 売上・利益のデータを蓄積する

これらの「基盤づくり」が、法人化後のスムーズな移行を支えます。

最後に

「法人化はゴールではなく、通過点である」ということを忘れないでください。

法人化したからといって、売上が自動的に増えるわけではありません。法人化は、事業をさらに成長させるための「器」を整える作業です。大切なのは、法人化の前後で事業の中身をどう充実させるかです。

この記事が、あなたの法人化の判断に役立てば幸いです。

→ 法人化の前段階として、確定申告の基本価格設定・原価計算を見直しておきましょう。

→ 売上が月商30万円を超えた段階で考えるべきことは、売上30万円を超えたら考えるべき5つのことをご覧ください。


著者: 牧野悠(PRIMA! マーケティング・DX支援 / 株式会社AsetZ 執行役員)

一部上場金融機関出身。ハンドメイドビーズアクセサリーブランド「PRIMA!」のマーケティング・DX支援を担当。Instagram 60,000フォロワーのブランド成長に貢献。CRM自社開発による業務効率化(月次集計95%削減)を実現。現在はハンドメイド作家の事業成長支援に注力している。


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牧野悠

PRIMA! マーケティング・DX支援 / 株式会社AsetZ 執行役員

ハンドメイドビーズアクセサリーブランド「PRIMA!」のマーケティング・DX支援を担当。Instagram 60,000フォロワー。一部上場金融機関を経て、20名規模のDX支援企業の執行役員を務めながら、作家・生産者のビジネス成長を支援しています。

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